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BRAND STORYブランドストーリー

すこし緑みがかった紺の、上品な色あいのお店。
まっすぐな木枠の扉をあけると、落ち着いた照明の店内に栗色の木材を配したテーブルやカウンターが。
右手側には小麦色の焼き菓子たちが、左手のショーケースには、艶やかなケーキの数々が整然と並べられています。

 

 

おすすめのお菓子は『タルトカフェ』
優しい飴色をしたシンプルな見た目のタルトは、開店時からずっと愛され続け、シェフ自身もお気に入りのケーキです。

 

 

「じつは、『見た目だけの飾りならやらない』というルールを決めてるんです。何か載せることで美味しくなるならアリですがね。『綺麗』よりも『美味しそう』と言われたいですね」

こう語るのは、シェフの宇治田 潤さん。
調理師の専門学校を卒業後、日本のパティスリーやホテル、そして本場フランスでさまざまな経験を積み、2011年目黒区碑文谷に「パティスリー ジュンウジタ」をオープンしました。

 

「ずっと『自分の店』っていうのは意識していたんでしょうね。自分の名前で、自分のやりたい場所で、自分の作りたいものを作るっていうの。パティスリージュンウジタをオープンして、自分で『これが美味しい』って思うものをお出しして、同じ感性を持った方が買いに来てくださってて、それが楽しいです」

お菓子作りをしていて一番楽しいのは、『味見をするとき』と語る宇治田さん。
「美味しい!」と思えるものができた時が一番幸せで、逆に思い通りにできていないと物凄く悲しくなるのだそう。
そんな宇治田さんのお菓子は、シンプルに美味しさを追求したものばかり。
その美味しさは、宇治田さんの留まることのない探求心の中で生まれていきます。

 

日本とフランスで。『美味しさ』を作る楽しさを学ぶ

宇治田さんは1979年生まれ。子供のころから図工の授業などモノづくりが好きで、学校の先生の勧めで料理の道に進もうと、調理の専門学校に進学しました。
卒業後、銀座「ピエスモンテ」で一年、武蔵野調理師専門学校で助手として一年を過ごしたのち、葉山のパティスリー「サンルイ島」へ。
「サンルイ島」は、お菓子の基本材料であるプラリネ・マジパンなどから丁寧に手作りをするお店。ここで、フランス菓子の基礎を学びながら、「味を作る楽しさ」を感じたと言います。
プラリネなどは専門の製菓材料店で購入すれば手間を減らすことができますが、手作りすれば思い通りの味を作ることができます。
買ってきたものを組み合わせるのではなく、出来上がったお菓子の味を想像しつつ、ゼロから一つ一つ味を作っていく楽しさが身に染みたそうです。

サンルイ島には当時逗子店と葉山本店があり、逗子店で実力を認められた宇治田さんは、本店へと異動になりました。
本店は逗子店よりも空気が研ぎ澄まされていて、働く人の技術力の高さに、自分の無力さと無知さを痛感したと言います。

「すぐ打ち解けられたので仲は良かったですが、とにかく厨房での緊張感がすごかったですね。僕が作ったものがイマイチだと、先輩にすぐ『どけ!』と言われて、代わりに作られてしまいました。でも、職場で練習なんてできませんから、家に帰ってエアトレしたり、ひたすら頭の中でイメトレしたりして、何とかついていこうとしていました」

とにかく早く、とにかく綺麗に、とにかく美味しく作ることが出来る先輩たちの技術力を目の前に、宇治田さんは積極的にそれを吸収しようとしました。
何が美しさや美味しさのポイントなのかをひたすら観察すると、「これ凄い!」と感動することがいくつもあり、それらの見様見真似を繰り返して、自分のモノにしていったと言います。
そのうち、周囲から話を聞いているうちに本場フランスへの憧れを強くもつように。
実家に近い「ロイヤルパインズホテル」へと職場を変えてお金を貯め、二十五歳で渡仏しました。

「フランスのパティシエは、日本よりも『美味しさ』に貪欲なのが印象的でしたね。日本では見た目を繊細に仕上げるところに技術がありますが、フランスでは美味しければ形は二の次なところがあります。僕もそっちの方が好みですね。周りにも美味しいものがたくさんあって、『こんなものを作りたい!』と刺激を受けることがたくさんありました」

フランスで働いた店舗「Sadaharu AOKI(サダハルアオキ)」前にて

サンルイ島にいた時と同じように、「美味しい!」と感動したお菓子を自分のモノにしていった宇治田さん。
そんな刺激を受けたお菓子の一つが、冒頭でご紹介した『タルトカフェ』でした。
毎週日曜日に必ず通っていたあるパティスリーで出会い、以来十五年間、ずっと宇治田さんのお気に入りであり続けています。

 

 

「タルトカフェは、タルト生地にローストしたクルミと塩キャラメルを載せ、その上にコーヒーのムースを絞っています。詳細は内緒ですが、ムースは水分を多く閉じ込めるように工夫し、とても滑らかで優しい口溶けです。エスプレッソをしみ込ませたスポンジを中に忍ばせ深みも作っています。お持ち帰り時間30分まで、という我儘なタルトですが、ずっとお客様に愛していただいています」

帰国し、鎌倉「雪の下」のシェフを経て、2011年に自分のお店を開店した宇治田さん。
こだわりのタルトカフェはとにかく『美味しさ』を追求しているからこそ、飽きられることなくお店のショーケースを飾り続けています。

チョコレートはお菓子の幅を広げる面白い素材

「お菓子を作るときは、まず頭の中で『こんなお菓子を作りたい』とイメージします。そして作り始めるのですが…やっている間に、こっちの方がいいな、やっぱりこっちの方が美味しいな、と、いろんなことを試し始めてしまいます。最終的に、思っていたものと違うところに着地することもありますが、そういう時はだいたい思っていたものよりもずっと美味しいものができます」

試行錯誤を繰り返しながら、お菓子をどんどん美味しくしていくのが好きな宇治田さん。
そんな宇治田さんは、四年前からチョコレートに本格的に力を入れるようになりました。
その理由の一つに、フランスで出会ったある製菓用チョコレートの存在があります。

「ドモーリ社のスルデルラゴという地域で獲れたカカオを使ったチョコレートでした。ブラックベリーのような初めて食べる味に衝撃を受け、『これはお菓子の幅を広げる、面白さがあるな』と感じたんです」

パティスリージュンウジタを構えてしてしばらくすると、お菓子の業界では『Bean to Bar』と呼ばれるチョコレートの専門店が次々と開店。
カカオ豆から作るBean to Barチョコレートは、宇治田さんがフランスで食べたドモーリのチョコレートのように、大量生産のチョコレートにはない、個性的な味をつくることが出来ます。
そこで、宇治田さん自身もBean to Barチョコレート作りに挑戦。 作ったチョコレートを、板チョコやボンボンショコラ、お店のお菓子達に使用していきました。

 

 

「Bean to Barのチョコレートを使うことで、製菓用チョコレートでは作れない、深みのある美味しさが表現できます。『ガトーショコラドナンシー』というお菓子がありまして、これはクグロフ型で作ったバターケーキのようなチョコレート菓子なのですが、手作りのチョコレートを使うと、生き生きとした味に仕上がります。ほんのちょっと酸味や雑味があるチョコレートを使うことで、単調でない、奥行きのある味わいになるんですね」

シンプルに『美味しさ』を大切に、試行錯誤を繰り返す宇治田さん。
「チョコレートは無限の表現方法がある。やりたいことがたくさんありすぎて困る」と、楽しそうに笑っています。

 

2021年の新作。ラム酒をまとわせたドライバナナを入れ、ホワイトチョコレートをカラメリゼした「ブランキャラメリゼバナーヌ

 

「例えば、中にヌガーを入れて食感の変化を楽しんだりとか。それから、ホワイトチョコレートをキャラメルのように少し焦がして、香ばしさを与えてみたりとか。いろいろなことが出来ます。ミルクの分量をどのくらいにするのか、どの程度の焦がし加減にするか、そんな試作を繰り返して、最後に『美味しい!』ものに辿り着くのが、最高に楽しいですね」

2019年には、パリのサロンドショコラにも出展し、お客様の声や周りのショコラティエの技術をどんどん吸収する宇治田さん。
宇治田さんの作る新しいチョコレートから、目が離せません。

 

パティスリージュンウジタのアクセス・営業時間

パティスリージュンウジタ碑文谷店

所在地:〒152-0003 東京都目黒区碑文谷4丁目6−6
アクセス:東急東横線「学芸大学」駅・「都立大学」駅 徒歩14分
JR・東急「目黒」駅 バス15分
営業時間 10:30-18:00 10:30-17:00(土・日・祝日)
定休日:月曜日・火曜日(祝日の場合は営業)
URL:http://www.junujita.com/index.html

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